ステンレス多層鍋
このところ、ステンレス多層鍋をつかったお料理が続いています。
そこで、「多層鍋のここがスゴい!」特集をしてみることにしました。
ステンレス多層鍋の代表的なメーカーの一つである「ビタクラフト」のお鍋を例にとってお話を進めていきますね。
ステンレス多層鍋には、熱が短時間で鍋全体にまわり、冷めにくい特徴があります。
火加減は、最初だけ中火で、そのあとはずっと弱火かとろ火が基本。
火力は弱くても、食材全体を均一にしっかり加熱できます。
ビタクラフト鍋の場合、鍋の中で発生した水蒸気がお鍋本体とふたの隙間にぴったりおさまり、膜をつくる構造になっています。
これによって、お鍋本体とふたがシールされたような状態になります。
ふたを回したときに、クルクル回るようになれば、膜ができてシール状態になっています。
お鍋本体とふたが水蒸気の膜でシールされると、蒸気の多くは外にもれずに、鍋の中で対流するようになります。
鍋の中は高温ミストサウナ状態に。
そのおかげで、水を一切加えなくても、りんごとさつま芋を調理できるのです(先週のレシピです)。
普通のお鍋だと、蒸気がどんどん逃げ出してしまいます。
りんごとさつま芋だけではすぐに焦げ付いてしまうので、どうしても水を加えなくてはなりません。
りんごにはりんご本来の味があり、甘みもたっぷりあります。
さつま芋も同じです。
ステンレス多層鍋をつかえば、素材の味や甘みを最大限に引き出すかたちで加熱できますから、そのままでおいしく食べられます。
普通の鍋の場合、部分的に熱が強くあたるかたよった加熱になって、素材本来の味が失われやすくなります。
水を加えると、さらに素材の味や自然な甘さは薄まってしまいます。
そうなると、砂糖を加えなくてはおいしく食べられません。
これでは、ステンレス多層鍋でつくった料理と見た目は似ていても、内容は全然違うものになってしまいます。
他の料理をつくるときでも同じです。
ステンレス多層鍋は、素材本来の味や甘さや栄養素を最大限にまもる加熱ができるので、少量の塩を加えるだけで驚くほどおいしく食べられます。
こちらは、通常のお鍋でつくった場合。
素材の味や栄養素が失われやすい上に、水を加えるとさらに素材の味が薄まります。
それではおいしくないので、塩の量を増やしたり、砂糖、オイスターソース、豆板醤、化学調味料など、いろいろ加えることになってしまいます。
結果として、いつでも調味料の味しかしない料理になりがちです。
食事からとる塩や砂糖を減らしたいケースを考えてみましょう。
素材の味が失われやすいかたちで調理している場合、料理の仕方を変えずに、ただ塩を減らしても、とてもまずい料理になってしまいます。
小学校のころ急性腎炎で入院したことがありましたが、そのときに出た入院食がこんな感じでした。
そのまずさは今でも忘れられません。
望ましいのは、素材の味や栄養素を守る調理方に変えることです。
そうすれば、調味料の量を大幅に減らしながら、おいしい料理を楽しめます。
その上、ステンレス多層鍋の場合、材料を鍋にいれて弱火にかけ、放っておくだけでおいしくつくれる料理が多いので、お料理が苦手な方でも大丈夫。
中火より大きな火力はほとんど使わないので、エコロジーにもなります。
太田潤さんの『男の焚き火辞典』を読んでいて、ネイティブ・アメリカンが薪をむだにしないかたちに組んで、焚き火をしていたことを知りました。以下、その本からの引用です。
「ネイティブ・アメリカンの言い伝えに、『白人はたった1杯のお湯を沸かすのに自分たちの10倍の薪を使う』。また、『大きい焚き火は近づけないから寒い。小さな焚き火は近くに寄れるから暖かい』という言葉がある。」
食材そのものの味を大切にする。
味付けはごくわずか。
必要最小限の火力しか使わない。
世界中のどこでも、人々が食べてきた料理の原点はこのようなかたちだったのでしょう。
そのせいか、ステンレス多層鍋でつくられた料理には、何か嬉しい懐かしさがあります。
外食やできあいの惣菜ではなかなか出合えない味だけに、家庭でつくる価値のある料理です。